上記の続きです。
入所時に訪問診療を行っている医師や薬剤師と面談がありました。
「お母さんの状態がおかしいと思われたのは大体何年ほど前からですか?」
と質問を受けました。
これには思い当たるフシがたくさんありました。今から6年ほど前、私が実家で茶碗を洗っていたとき、「やかましい」と母が一喝したこと。父が母の腕に包帯を巻いてやっていたときも、気の毒になるほど父に怒りをぶちまけていたこと。
最も困ったのは電話です。毎日固定電話のある私の所に電話をかけてきて、難癖をつけてきます。母からの電話がかかってくるたびに、私はアトピーがひどくなるほどでした。妹の自宅には固定電話がありませんので、かけません。この辺は料金を考えてのこと。頭が緩んでいるといっても、金銭的にはしっかりしていたのですね!
他には、何かなくなると、人が持っていったのではないか?と何度も言うこと。
医師や薬剤師には「認知症を抑える薬を増やした方が良い。また精神安定剤の種類も変えた方が良い。今まで服用していた薬は、せん妄や転びやすくなるなどの副作用がある。」と言われました。私は「精神安定剤は多少危険なことはわかっているが、怒りを抑えるのに役立っているのだから、違う薬を使う場合も怒りが前面に出てこない処方をしてほしい」と申し上げました。危険性のない良い薬を使っても、母が攻撃的になってこちらに向かってこられたら、つきあいきれなくなります。
薬剤師の先生は、「よほど懲りたんですね」とおっしゃり、望みを受け入れてくださいました。
先生に伺ったところ、認知症の初期は物忘れと暴言が一緒に現れるようです。母は物忘れはあまりなく、暴言のみが突出していましたので、例外パターンなのでしょう。
現在の母は、施設での規則正しい生活が功を奏し、しっかりしてきたと思います。愚痴の多い性格そのものは変わっていませんが、私と顔をつきあわせても怒りをぶちまけてくることはなくなり、穏やかになりました。精神安定剤を増やさなくても、睡眠もスムーズになってきていると伺いました。
自宅にいるときは頑固な便秘に悩まされていましたが、いつの間にか治ってしまいました。入所して4ヶ月経った現在は規則正しい暮らしが身につき、精神にも身体にも良き影響が及んでいると思います。
また、人とのふれあいが多少なりともありますので、脳の活性化にも役立っているのかもしれません。
母は根が頑固なので、家族の意見をすんなりと受け入れることはありませんでした。専門家の手を借りなければ、今頃手のつけられない状態になり、誰かが倒れていたと思います。認知症だけではなく、身体に故障をかかえた高齢者がいるご家庭は、専門家の手を早めにお借りになる方がすべての面でうまくいきます。
症状が重くなると、入所を断られる可能性もあります。ギリギリまで自宅で面倒をみていたことで、受け入れてくれる施設がなくなってしまうこともあるのです。介護認定が軽いうちに施設を探したほうが安心できると思います。