天空の縁側

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作曲家の目を通して、アートや日々の出来事などをあるがままに綴っていきます。

ショパンピアノソナタ3番2楽章〜再現部 分析

mizuki-shiro.hatenablog.com

前回(上記のリンク)はトリオを分析いたしました。今回は再現部です。

 

概略

再現ですので、提示部のほぼ完璧な繰り返しです。そのため、提示部で記述したこととは別に、前回お約束した、トリオの最初に記した完全5度の謎(大げさですが)を探ってみたいと思います。

再度、トリオ1(C)の最初の譜例を出します。

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トリオ(C)の最初〜譜例43〜

赤い線と丸で囲んだ音は全て完全5度(下記譜例44参照)でつながっています。

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完全五度のつみあげ〜譜例44〜

 

楽曲全体が、5と4の数字で統一されていることは、1楽章の最初から記述してまいりました。スピリチュアル的な見地にたてば、孤独や父、自我、社会の暗示があること、何度も書いております。しかし、それは奥の奥に隠されたことであり、音楽とはまた別のところにあるのです。

今回は音の現実的追求に特化して書きます。トリオにおける完全5度の4個の重音(譜例44)が、提示部や再現部にどのような形で隠れているのか?ということです。

再現部始まり

 

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再現部の始まり〜譜例45〜

音源:14’40”〜

赤い丸で囲んだ音は完全5度音程です。1〜2小節目にかけて、F→B→Es(3個の音)と動きます。3小節目〜4小節目にかけては、C→F→B→Esと4個の音が動きます。二例ともトリオの音列の逆行となっています。(※トリオはH-dur、再現部はEs-durですので、長3度上げてください。)

このような音の置き方をみていますと、なりゆきまかせとは思えません。作曲の順番として、最初にトリオを書き、次に提示部を書いて、修正しながらつなぎあわせたのかもしれないと私は睨んでおります。

ショパンの書法は真似がしやすいと書いておられる方もいます。確かに表面上は簡単に似せることはできるのですが・・・譜面を読み込んでみますと、ショパンの本質に触れ、圧倒されます。上っ面を撫でただけの真似は虚しいものだと気づく人もいるかもしれません。

作曲家の一面のみで判断することは、魚の最もおいしいところ(アラ)を捨ててしまうのと同じように思います。おいしいところは奥に潜んでいるのです。

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転調の前〜譜例46〜

ここでは、5度の展開音程である4度 B-EsとC-F をほんの少しずらして、置かれています。ポリフォニックな効果もありますね。

展開

その後はg-moll→f-mollと発展していきますが、譜例46と同様の音の配置がされています。

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f-mollの部分〜譜例47〜

 5度の音列は下記の通りです。

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f-mollの音列〜譜例48〜

トリオの完全五度(譜例44)は、8分音符の中に巧妙に隠されておりました。さまざまな見方はあるでしょうけれど、私は上記のように感じ取りました。提示部の分析に、重ね合わせていただければ幸いです。

音源


Cyprien Katsaris - Chopin: Piano Sonata No. 3 in B minor, Op. 58

14’40”くらいからが、再現部です。カツァリス 氏は、1楽章の公開レッスンで

ショパンが同じ曲を何回も弾く時は、いつも違った弾き方をしたのです。同じパッセージが何回も出てくるときは、ダイナミックやキャラクターにいろいろ変化をつけました。ショパンの演奏を聴いた人々の証言から、彼の考えをうかがうことができるのです。 

 と述べておられました。上の演奏でも、ご自分のスタイルを貫いておられます。

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展開部分(gmoll)〜譜例49〜

g-mollに転調してからは、ラベンダー色で囲んだ部分浮きあがるように、弾いておられます。内声のcisから始まる半音進行、譜面に忠実であるべく、再現部では強調されたのでしょう。

カツァリス氏は、作曲家の思いに忠実であろうとする態度、原曲にアレンジを加え自分の音楽にするという2面性があるように感じています。リサイタルを拝聴したのは1度しかありませんので、決めつけることはできませんが、上記の演奏にもこのような彼の個性が溢れていると思いました。

東京では2019年2月にコンサートがあります。彼のプログラミング、演奏は玄人受けするもので、心待ちにしております。

次回は3楽章に入ります。