天空の縁側

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作曲家の目を通して、アートや日々の出来事などをあるがままに綴っていきます。

シプリアン・カツァリスさんのリサイタル

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シプリアン・カツァリスwikiより)

19日に日経ホールでカツァリス さんのリサイタルを拝聴させていただきました。昨年も拝聴いたしましたが、今回のほうが調子が良かったのではないでしょうか?もっと聴いていたくなるほどの演奏でした。肩の力が抜けており、余裕綽々。ご自身の主張がじわじわと伝わってきました。イソップ物語「太陽」のような音楽でした。(ギリシャ神話ではアポロン(音楽の神)=太陽のこと。カツァリス さんはキプロス人であるようですが...このようなイメージがもたらされるということは、ご自身の血に関係があるのでしょうか?)

また、本当の意味でロマンチック(センチメンタルではない)な演奏だと感じました。私は直接的に感情をぶつけるのではなく、余韻を残すことをロマンチックと捉えています。

「みなさんフランスのエスプリをお楽しみください」といったところでしょうか?

 

プログラムにはなかった即興演奏、初めて聴かせていただきました。最初に音型を聴いた時、即興演奏が始まるんだな・・と思いながらもよくわからず音の羅列に身を任せておりました。

変化和音のアルペジオから、スメタナモルダウオッフェンバック舟歌につないでいき、ドボルザークのスラブ舞曲、さくらさくら、不明の曲(カツァリス さんの曲?)最後にまたさくらさくらが崩れ(花が散り)また不明の曲に戻り、終わりました。これはプログラム最初の曲目、グリーグノルウェーの作曲家)につなぐための演出であったのかもしれません。

スメタナドボルザークは東欧、オッフェンバックは西欧、カツァリスさんはキプロス人なので南欧、日本(東洋)、プログラム最初の作曲家グリーグは北欧。このようにヨーロッパと日本を音楽で結ぶ試みであったのではないかと、考えます。「音楽は世界の共通語ではない」という主張でもあると、私は受け取っておりますが、いかがなものでしょうか?

音楽が世界の共通語であったならば、民族特有の味はなくなり面白くはないでしょう。

演奏はパラフレーズ風で、リストやシフラ さんへの敬意を感じました。シフラ さんが「テクニックだけで音楽的ではない。」と一言で片付けられたのは非常に残念です。カツァリス さんはシフラ コンクールで優勝なさっているので、思い入れはひとしおなのでしょう!

 

グリーグ「抒情小曲集」より

 抒情小曲集の中から抜粋して、12曲が演奏されました。グリーグは冒頭にも記しましたように、ノルウェーの作曲家です。ノルウェーの血と西洋クラシックとの合体により、独自の色合いが醸し出されておりました。ある曲ではシューマンがかすかに聞こえてきたり、しかしそれを打ち消すように、小鳥のさえずりが響いたりと、日常の中のさりげない風景を感じさせる音楽でした。

グリーグという作家は、音楽も自然の一部と捉えていたのかもしれないと感じつつ、聴き入っておりました。カツァリスさんはグリーグの世界観を前面に押し出し、ご自身は脇役に徹しておられたようにも思えました。

シューマン子供の情景

トロイメライが入った曲集です。ご自身の内面と向き合い、ロマンチックな世界を表出されていました。カツァリス さんはフレーズの繰り返しや、ソナタの再現部では、必ず違う弾き方をなさいます。そのお得意のやり方が、あちこちにみられました。トロイメライでのリピート部分では、ppの音色が美しく、聴き入っていたところ、咳払いでかき消されたり、他の部分でも客席のノイズが多くなってきて、少々腹立たしく感じた場面もありました。

しかし、最後の最後まで音色の変化と、繊細で緻密な表現にこだわっていただき、このリサイタルの中では最も満足度が高い演目でした。(私の独断と偏見です!)

 

ビゼーカルメン」より

カツァリス さんのアレンジでカルメンから4曲を演奏していただきました。これは昨年も拝聴いたしましたが、今年のほうが良かったです。ポリフォニックなアレンジなので、ソロで演奏することは非常に難しいのではないでしょうか?それをさらっとやってのけることができるのは、才能もあるでしょうけれど、日々の節制と訓練の賜物であると、私は思っています。

カツァリス さんは、お酒もコーヒーもお飲みにならないとか?お酒など飲みますと、動くのが面倒になりますし、それだけ時間の無駄になります。音楽と向き合う時間を第一に考えておられるのでしょう。今年の5月で68歳になられるカツァリス さん、ますます音楽と対峙する時間を大切にされていくのでしょうね。

サン=サーンス「動物の謝肉祭」

こちらも昨年拝聴いたしましたが、今回の方が充実していました。この曲は小学校の音楽の時間によく聴きました。しかし、私の好きな曲を授業中には聴かせていただけなかったのが不満で、レコードを買って聴いていたことを思い出します。

グリッサンド、1音づつクリアに聞き取れました。オケor室内楽の編成なので、厚めの音を出すには、ピアノソロでは相当のテクニックが必要ですね。以前に2台のピアノで聴いたことがありますが、ソロで聴いたのはカツァリス さんが初めてです。いずれにしても楽しく聴くことができました。

アンコールは2曲、バッハとミシェル=ルグラン氏の映画音楽のアレンジものでした。これだけの曲目をお一人でやるには、相当な集中力と体力と、準備が必要です。

日本では前期高齢者と言われる年代、彼の音楽を聴かせていただいて、私も彼の年齢になるまでに、今考えていることを形にしなければと心に命じました。

 

 


MICHEL LEGRAND - I WILL WAIT FOR YOU - LES PARAPLUIES DE CHERBOURG