天空の縁側

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作曲家の目を通して、アートや日々の出来事などをあるがままに綴っていきます。

ショパンピアノソナタ3番3楽章〜再現部 分析

mizuki-shiro.hatenablog.com

 

前回(上記のリンク)はトリオ後半を分析いたしました。今回は再現部に入ります。

再現  → コーダの順に記していきます。

 

 再現

 

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再現部はじまり〜譜例81〜

音源:22’23”〜

 譜例81赤線を引いたところから再現部がスタートします。再現部では、提示部の材料にバリエーションが加えられています。これは、そっくりそのまま繰り返すことの多かった中間部(トリオ)と対比させる意味もあるのはないでしょうか?

加えて、提示部より小節数がコンパクトになっています。

提示部始まりの部分(譜例81)では、左手は三連符、右手はときおり装飾が加えられ、ノクターン風に書かれています。左手三連符は、4楽章が6/8であることを予告しているのかもしれません。

譜例81の最後から数えて2小節目、赤線で囲んだ部分は、次の部分へのつなぎです。こちらでも、統一要素5度を、楽曲の屋台骨的な音disに向けて、分散和音的に配置しています。

3楽章トリオでは何度も記してきましたように、接続部分全部に、ショパンは重要な事柄を詰め込んでいます。

カツァリス さんの演奏、再現部のはじまりは夢の中で奏されているようです。まるで天使が舞っているように感じました。しかし、楽章の終結部分に近づくにしたがって、だんだんと現実に近づいていくような、硬い音色に変化していきます。このあたり、共感がもてるところです。

彼はショパンの感情や思想を共有し、緻密に練り上げて演奏なさっているのかもしれません。言葉ではなく、音楽だけでこれらを伝えたいと思っておられるのでしょうね。

コーダ

音源:23’35”〜

コーダは、提示部テーマの素材の中の、主として4つの素材を組み合わせて、展開しています。テーマの最初の部分を、再掲します。(譜例82参照)

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提示部テーマの最初〜譜例82〜

 

展開材料は下記のとおりです。これらの材料に付点を組み合わせています。

  1. 連打を含む音型(群青色で囲んだ音型)
  2. 順次進行(緑色で囲んだ部分)
  3. disとeを組み合わせる(赤い丸)
  4. 刺繍音的な音型(スカイブルーの四角)

 

 

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コーダ〜譜例83〜

 

コーダは譜例83、1段目の2小節目からはじまります。

下記に、提示部テーマの材料(こちらを参照)とコーダでの展開について、材料別に紹介していきます。

1)連打を含む音形

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テーマの頭から発展〜譜例84〜

譜例84は、提示部テーマの頭を発展させて、コーダの始まりとしていることを示しています。青い丸で囲んだ連打、これらが別の意味に言い換えられて、あちこちに現れます。連打は2回ですので、コーダの低音域(八分音符の連続)では同じ音型をきっちり2度繰り返しています。(譜例83の低音域、青い線で囲んだ部分をみてください)

2)順次進行

 

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順次進行に変化を加えて〜譜例85〜

譜例85は、順次進行(音階)的な音列の発展を記しました。譜例83の2段目、2小節目4拍目からは、順次進行が始まります。右側のテーマの音列を全て含め、半音を加えることによって、元の音の記憶を徐々にうすらがせていく効果があると思います。

同じく譜例83の1段目、2小節目の低音域には、音列の反行形が置かれています。テーマは付点のリズムでしたが、コーダでは八分音符の連続。こちらも3楽章の記憶から離れさせる方向へ導く役割を果たしていると思います。

3)disとeを組み合わせる

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disとeとの組み合わせ〜譜例86〜

disはこの楽曲全体の屋台骨的な音として、重要な役割を果たしています。4楽章への接続部分としての役割を果たすこの部分でも、上声部、内声、低音域、全てに配置されています。ご自身でお確かめになることをお勧めします。

4)刺繍音的な音型

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刺繍音的音型〜譜例87〜

提示部テーマの旋律はdisを中心として、メリスマ的な動きをしていると記しました。コーダでもこの音の動きを、立体的に模倣しています。

譜例87、右側の部分はコーダの上声部を分解したものです。一本の旋律ではあるのですが、テーマから派生した刺繍音的な音の動き(上段)と、対旋律的な音の動き(下段)に分けられます。この例に限らず、旋律は立体的な作りになっていることが多いです。特に演奏を専門とされる方は、このように譜面を見つめることにより、ご自身の世界に新たな観点を加えることができるでしょう。

最終和声の上声は、1楽章、2楽章に続き、disで終わっています。4楽章はh-mollから始まりますが、disを中心とする調性やその近親調、たとえばEs-dur gis-moll  c-moll H-durなどへの転調を暗示しているものと思います。

 

3楽章全体の位置付けですが、1&2楽章と4楽章とをつなぐ役割があると思いました。トリオの主要部分では同じフレーズを何度も繰り返して統一性をもたせ、接続部分では、自由闊達に展開する・・・他の楽章の多様性(楽想の豊富さ)を引き締める意味で、書かれたのではないか?と私は勝手に思っています。

音源

 


Cyprien Katsaris - Chopin: Piano Sonata No. 3 in B minor, Op. 58

 再現部は22’23”からスタートします。

 

 次回から4楽章に入ります。↓  ↓

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