天空の縁側

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作曲家の目を通して、アートや日々の出来事などをあるがままに綴っていきます。

ショパンピアノソナタ3番4楽章〜対照部B〜分析

mizuki-shiro.hatenablog.com

 前回は、循環部A1(上記のリンク)を分析いたしました。今回は対照部Bに入ります。

 

 

対照部B

対照部とは文字通り、循環部に対する副次的な部分です。対照部と循環部を繰り返し、円を作っていくのが、ロンド形式なのです。ちなみにロンド=円(◯)を意味します。

対照部Bも循環部と同様、3部分に分けて分析していきます。

 

1︎⃣はじまり

 

譜例101

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B1始まり〜譜例101〜

譜例101B1︎⃣からが対照部の始まりです。調性はH-dur 、同主調への転調です。B1の1〜2小節目まで、緑色で囲んだ音は、循環部Aあたまの音を利用しています。循環部では横の流れであったものを、縦の線(和声)に置き換えています。詳細は譜例102をごらんください。

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循環部AあたまからBのあたまへ〜譜例102〜

左側の小節は元はh-mollであったものを、H-durに移調しました。

左手の分散和音は重音h-fisに、右手の音型はそれぞれ、和声として積み上げられています。

他の材料は以下の通りです。再度譜例101を確認してください。

  1. 刺繍音的な音型(スカイブルーで囲んだ部分)
  2. 4度上に動き、2度下がるといった、山型の音型(赤で囲んだ部分)この2度の下降は、1楽章1テーマの冒頭(g-fis  H-durならばgis-fis)を含んでいます。
  3. 16部音符を主流とした音階

 2.の山型の音型(赤で囲んだ部分)について、下記譜例103に噛み砕いて記しております。

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山型の音型〜譜例103〜

dis-gis-fisの形は、fis-h-aisと模倣されており、下の段の最初の小節にあるような、cis-gis-fis。似た形として模倣されています。

また、この音型は、縦の線(和声)にも受け継がれています。最後の小節をみてください、cis-e+fisの和声 に、上声部では、h-dis-cisへと模倣されています。

 

加えて、上記の音型に含まれる2度の下降(赤い点線)は、高さを変えて繰り返されており、対照部の重要な要素であることを提示しています。下記譜例104を参照。

譜例104

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2度の下降(1楽章1テーマの冒頭音型より)〜譜例104〜

 

上記全体の流れは、譜例101の1段目最終小節〜2段目にかけて、赤で囲んだ部分を確認してみてください。

 

下記譜例105では、楽章全体の屋台骨的な音=disが強調されていることがみてとれると思います。

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disの強調〜譜例105〜

和声に言及しますと、dis-mollの同主調であるDis-durの1度を、4小節半にもわたって続け、接続を経て、再びdis-mollに戻っています。普通ならば、接続を経て、別の調性に移行しますが、ショパンはここでは、接続を別の意味として訴えたかったようです。この事実から楽曲全体を統一する音は、disでありesであると、改めて主張したかったのだと、私は捉えています。

刺繍音的な音の動きが中心となって、disを装飾しています。また内声には、序奏の終わりに出てきた6度を含む、山型の音型を出現させています。

次に転調について言及いたしましょう。

H-dur→dis-moll→Fis-durです。大まかにみて3度で結ばれていることから、厳密な3度転調ではないものの、似た要素を持っていると思います。また別の意味で、循環部Aの頭の音型なぞっているとも言えます。→H-D-Fisと旋律が動きます。

2︎⃣中間部 

 譜例106

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中間部はじまり〜譜例106〜

 譜例1062︎⃣からが、中間部の開始部分です。材料は、16部音符の連続と、8部音符の伴奏形(循環部A 左手音型からの発展)で覆われつつも、十二分に展開されています。

16部音符は、山型の音型(赤丸、赤い三角)と音階、刺繍音的な音型(スカイブルーで囲まれた音)から成り立ち、特に刺繍音的音型は言い換えられ、拡大されています。これらの詳細については下記譜例107を参照してください。

 

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刺繍音的音型の言い換え〜譜例107〜

譜例107は中間部の最初の小節を噛み砕いたものです。(譜例106参照)

左側の小節は、上行音階 A〜山型の音型 B〜下降音階 Aとなっています。音階はほぼ共通の音を使っており、順行と逆行の関係になっています。これは、右側の小節(刺繍音的音型)を言い換え拡大していると解釈できます。このような例が中間部には多数見受けられます。

次に山型の音型の模倣について、触れます。下記譜例108をごらんください。

 

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山型の音型模倣例〜譜例108〜

上記より、左手の伴奏形は、手の癖で思いつきで書きなぐったものでないことは、見て取れると思います。ショパンはピアノの名手でしたが、現代日本の多くのピアニストのように、作曲を片手間に片付けてはいないことがよくわかります。これは、才能や価値観、音楽の理解の深度が大きく違うことに起因するものではないでしょうか?

 

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中間部終わり(終結部へのつなぎ)〜譜例109〜

譜例109は大変重要な材料を含んでいます。赤い点線、赤い丸をつけた2度音程は、次の終結部で重要な意味をもちます。譜例104を再度ごらんください。加えて、下記の譜例110もごらんください。

緑色で囲んだ部分のうち、右側の小節は、e-mollに移調したものです。譜例109c-hは近い将来e-mollへの転調があることを示唆しているのです。且つ、この2度は1楽章1テーマの冒頭の音であることから、循環部の頭への展開が始まることも、示唆しています。このことを理解した上で、終結をごらんください。

中間部の転調はFis-durからH-dur(下属調)となっています。対照部はH-durで始まっていますので、元に戻ったことになります。(H-dur→dis-moll→Fis-dur→H-dur)これは、ロンド=円(◯)を暗示しているのかもしれません。

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1楽章1テーマ冒頭の音〜譜例110〜
3︎⃣終結

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終結部はじまり〜譜例111〜

譜例111 3︎⃣からが終結部のはじまりです。中間部でも記しましたように、3︎⃣の2小節前、左手のhとcの2度音程(赤い点線)を発展させ、循環部へつなぎます。詳細は下記、譜例112をごらんください。

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終結部2小節の音型より2度の抜き出し〜譜例112〜

これは、終結部の始まり(譜例111)右手2小節間の16部音符の音型より、2度音程を、抜き出したものです。hとcが模倣され、装飾を加えられて、次の循環部へなだれこもうとしているのが、見て取れると思います。

同じ小節の左手はh(e-moll属音)で終わり、空白を経て、2オクターブ下のhに受け継がれ、半音階上行形を経て再び沈黙し、循環部手前で再びhとcの連続が現れることから、終結部全体をe-mollのドミナントと判断して良いと思います。(譜例113参照)

スピリチュアル的にみれば、5(ドミナント 属音)という数字が極端に強く出ていることから、対照部全体を孤独、葛藤の極みと考えて良いと思います。

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終結部最後〜譜例113〜

譜例113は、循環部A2手前の部分です。オクターブの移動による響きの多様性、音の波(アルペジオ)と空白(休符)による立体感は、循環部A2の主流となる、ポリメトリックを示唆していると感じます。

 

音源


Cyprien Katsaris - Chopin: Piano Sonata No. 3 in B minor, Op. 58

対照部Bは、25’15”からスタートします。

 

次回は循環部A2 A3を分析します。↓ ↓ ↓

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