天空の縁側

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作曲家の目を通して、アートや日々の出来事などをあるがままに綴っていきます。

バッハ平均律1巻8番 Fuga 〜楽曲分析概略と提示部〜

 

概略

平均律1巻8番はPreludoがes-moll  Fugaはdis-mollで記譜されています。ピアノで弾くことを考えれば、Fugaもes-mollで記譜したほうが読みやすいと思います。また、出版社によってはes-mollで記譜されているものもあります。ただ、disという弦楽器的でしかもビロードのような調性の色合いは生かしたいものです。異名同音であっても、響きは違うのです。

なぜ異名同音で書かれたか?などと論議するつもりはありません。論議より音楽そのものを味わい、その結果個々に判断すれば良いことだと思います。

前置きはこのくらいにしまして・・・この楽曲はストレッタという手法を使った緊張と、テーマの拡大などを使い、弛緩を暗示する部分の組み合わせからできています。ストレッタとは、追い上げのテクニックです。テーマを歌い終わらないうちに、再びテーマが歌われ、重なっていきます。

前半から中盤にかけてはストレッタとテーマの提示が繰り返し現れます。嬉遊部(つなぎの部分)ではテーマ中の材料がカノン的であったり、音列だけを反復したりなど、様々な方法で緊張を高め、テーマの提示へとつないでいきます。

中間部分は、ストレッタのみ。テーマの頭と頭の間隔が少しづつ狭まっていき、クライマックスをむかえます。

その後は、テーマの拡大が現れ、変形されたテーマとともに絡み合い、緊張が解かれていきます。

全体は大きくみて3つに分かれますが、6〜7部分程度に分け、見やすさを優先することにしました。今回は提示部までを記します。

提示部

譜例1

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8番フーガ提示部〜譜例1〜

フーガの分析は「スピリチュアル的楽曲分析」ではお初になりますので、まず用語から説明いたします。

  1. フーガのテーマは、主唱答唱がひと組みとなっております。この二つをつないだり、嬉遊部(展開部)へのつなぎは、コデッタという短い旋律を作って流します。
  2. テーマには対旋律が絡みます。テーマを支え、且つ印象的な要素を含みます。
  3. 答唱とは概ね、主唱を完全5度上に移調したものであります。また、主唱冒頭に属音があるもの(8番のフーガはこの例にあてはまります)、属調部分を含む主唱の答唱は、これらの部分を完全4度上に移調します。前者を正応、後者を変応と呼びます。

 テーマの特徴

さて、平均律8番のフーガのテーマの特徴は畳みかけと逆行にあると思います。(譜例2参照)これはストレッタに意味をつなげ、自由声部(テーマ以外の部分)のモティーにも受け継がれ、緊張を持続させていきます。

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テーマ主唱〜譜例2〜

譜例2赤の囲みは下記のリズムの繰り返しです。

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テーマの再現、ストレッタにより、このリズムは繰り返され、畳み掛けを強めていきます。それから、黄緑色の部分逆行音列も中心的要素です。これらは曲が進むにつれ、明確に見えてきます。

例1ピンク色で囲んだ音、これらは、対旋律において、テーマの畳み掛けのイメージを凝縮して表している音型です。

 第一嬉遊部へつなぐ

提示部の最後、答唱の変形が現れる部分譜例1 二段目の最終小節から)の自由声部は、テーマの材料がさまざまな形で言い換えられています。

まず、答唱の入りに向けて、アルトの声部で答唱を誘い出します。こちらは譜例1青線を引っ張った部分です。詳しくは下記の譜例3をごらんください。

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答唱の入りに向けて〜譜例3〜

答唱と同じ音列がアルトにありますね?

そして次の小節(譜例13段目1〜2小節目にかけて)、テーマの材料である逆行を、繰り返したり、声部を超えて模倣することにより展開し、次の第1嬉遊部へとつないでいきます。(譜例4譜例5を参照)

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逆行音列の畳み掛け〜譜例4〜

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音階の逆行形〜譜例5〜

 

次回は第一嬉遊部属調のストレッタを分析します。

 

オンラインレッスンのお知らせ

 現在、オフラインでアレンジピアノのレッスンを行っています。これとは別に、オンラインに限定し、楽曲分析和声を含むキーボードハーモニー楽典(和音と調性判定を重視)聴音(特に2〜4声中心として)の個人レッスンを来年度より行う予定です。これはコロナなどの伝染病が理由ではありませんので、伝染病が終息に向かったとしても続けます。詳細は別記事として、アップいたします。