天空の縁側

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作曲家の目を通して、アートや日々の出来事などをあるがままに綴っていきます。

バッハ平均律1巻8番 Fuga 〜楽曲分析 第一嬉遊部と属調ストレッタ〜

昨年12月より一度も分析の話題に触れることができませんでしたが、少し余裕できましたので、続きに入ります。前回の分析は下記リンク先です。

mizuki-shiro.hatenablog.com

今回は第一嬉遊部属調ストレッタを分析します。

 

第一嬉遊部

 

譜例6

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第一嬉遊部と属調ストレッタ〜譜例6〜

 

 第一嬉遊部譜例6の2小節目途中〜7小節目3拍目まで)のティー(青色で囲んだフレーズ)はテーマの後半(青の四角で囲んだ部分)を用いています。(譜例7参照)

 

譜例7

 

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ティーフに対する旋律は音階(テーマの材料)を使い、畳み掛けるように繰り返していきます。有機的なつながりにより、モティーフを支えます。

 

属調ストレッタ

譜例6を見れば一目瞭然。赤で囲んだ部分が主唱のストレッタ青が答唱のストレッタです。

 自由声部の興味深い部分はピンクで囲んであります。これは下記譜例8に取り出してみます。

 

譜例8

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譜例6自由声部詳細〜譜例8〜

上記譜例8は、気づいた全てを指摘したわけではなく、一部に触れております。自由声部にテーマの材料を、拡大、リピートなどを用いて統一感を保ち、緊張が持続されていることをご理解していただければと思います。

 

そして大切なこと。この部分までの頂点(1回目のクライマックス)は属調のストレッタ に入って6小節目の2拍目答唱のaisの音となります。ストレッタ中の頂点でもあり、緊張感をもったfの音が必要だと感じます。主唱のストレッタから徐々に盛り上げ、この部分でキッパリと言い切るような演奏が良いのではないでしょうか?

その後は、ストレッタではありますが、緊張が緩んでいきます。

クライマックスについては続きの記事でも触れていますので、読んでみてくださいませ。

閑話休題

バロック時代は王侯貴族中心でしたので、どうしても王の望むものを作った人が脚光を浴びます。

 

当時はオペラや派手な宮廷音楽が中心でした。このどちらにもバッハは手を染めず、ドイツで教会のオルガン演奏を主流とした活動をしていましたね。しかし、評価が低かったわけではありません!評価が低い=一般大衆の耳がついていけなかったというのが正しいところではないでしょうか?

 

その道の専門家や評論家、その他芸術家にもいろいろな感覚の持ち主がいます。ですから、高名であったとしても、的確な評価が下されるとは猫目石一家は思いませんね。バッハも誤解されつつ、埋もれていた時期があったのでしょう。

 

バロック時代はヘンデルテレマンといった有名どころもいて、バッハだけが突出していたわけではありませんでした。時代の流れによって、メロディが太いもの、旋律が主体となる曲が好まれ、バッハのような対位法的な曲はあまり好まれなかったことは確かなのでしょう。

 

バッハの作風の中心にある、対位法的な手法は200年も前の、ルネサンス期に発展し完成し尽くされたものと思われ、その時代の耳には馴染まなかったのかもしれません。バッハはこの対位法を磨き上げ、新たな風を吹き込み、器楽的書法を確立させました。この新たな風が玄人の耳には新鮮であっても、時代の中心であったホモフォニー的音楽の派手さに負け、なんとなく古臭いとしか感じられなかったのかもしれません。且つ、わかりにくいものは悪いものと決めつける人々も存在したと思います。

 

いつの時代においても、わからない人にはわからない。チャイコフスキーベルリオーズは、バッハを酷評していたとか。猫目石一家「あぁ〜」と思いました。

 

対位法的作品はメロディが何層にも絡み合ったり、離れて単旋律になったりするなど、複雑な動きをしますので、わからない人には近づくこともできない。とっつきが悪いのです。このとっつきの悪さのために、損をしたのだと思います。

 

バッハを再評価したメンデルスゾーンは大きなお仕事をされました。メンデルスゾーンの師匠がバッハ研究家であったことも影響しているやもしれません。これは一種の運命であるかもしれませんね。

余談ですが、メンデルスゾーンは同時期の作曲家とは技術的に一線を画す存在であったようです。ショパンシューマンなどとは全く違う、洗練された作曲技術を得られる環境にいたからでしょう。ちなみにショパンは、フンメルの模倣に近い曲もあり、一部の楽曲を除き、ピアニスト寄りの音楽家であったと思います。

 音源

 

リヒテルの古い音源です。4分23秒くらいからフーガに入ります。 

 

次回はIV調提示部平行調提示部を分析します。↓ ↓ ↓

mizuki-shiro.hatenablog.com

 

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