天空の縁側

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作曲家の目を通して、アートや日々の出来事などをあるがままに綴っていきます。

バッハ平均律1巻8番 Fuga 〜楽曲分析 平行調提示部とIV調提示部〜

mizuki-shiro.hatenablog.com

上記リンク先は前回の記事です。

平行調提示部IV調提示部共、テーマは反転して提示されます。そして平行調からIV調への接続部分、IV調テーマの自由声部には、両方ともテーマの尻尾の部分を使って展開され、原調のストレッタへと導きます。

※譜例9を参照することが多々あります。記事中にリンクが張ってありますので、クリックしてください。例)譜例9 ←こちらをクリック

 

テーマの提示方法

 

譜例9

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譜例9〜平行調提示部とIV調提示部〜

平行調提示部は1段目5小節目〜  IV度調提示部は2段目4小節目〜 両方とも、テーマを反転して(逆さまにして)提示(赤線 赤い点線)しています。また、平行調の方は、主唱のみ、IV調の方は、主唱と答唱を続けて提示。テーマを完全な形で出すのではなく、バリエーションを加えて流動的な雰囲気を醸し出しています。(3段目IV調提示部の答唱が特に顕著です)

 

これは続く大ストレッタを飽きさせないための演出でもあるのでしょう。また再現部でも、テーマが拡大され、延々と続くことを考慮しての結果ではないでしょうか?

 

反転テーマとモティー

譜例10

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譜例10〜テーマ モティー


譜例10は、譜例9からテーマを抜き出し、接続モティーフ(M1 M2)を示しました。

平行調のテーマ(反転)は、3小節目まで。M1はテーマの尻尾から派生したものです。

 

M2はIV調のテーマ(反転)の尻尾が使われております。

IV調提示部への接続

譜例11

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譜例11〜M1接続

譜例11譜例9の2段目1〜3小節目までを、大まかに分解して示したものです。→ 譜例9オレンジ色で囲んだ部分を参照すること。

 

M1はオーソドックスに模倣されているだけではなく、一部を拡大したり、他の音形を挟むなどして(譜例11 ヘ音記号)発展させつつ、IV調提示部へと入っていきます。

 

譜例12

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譜例12〜iV調テーマの頭へのつなぎ

 

譜例12はIV調テーマの頭へのつなぎです。( 譜例9 2段目2小節〜4小節にかけて)

テーマ(反転)の頭の完全4度へとスムーズに繋げるため、完全4度 完全5度(4度の転回形)を繰り返しています。たった3小節の短い接続ですが、無駄のない展開例です。

 

IV調提示部の自由声部

譜例13

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譜例13〜IV調提示部自由声部

譜例13M2の展開を示したものです。M2の音列(音階)を使い、テーマの性格を強調しつつ、盛り上げていきます。完全8度 完全1度上の模倣は、直接的で印象が強くなります。

 

IV調主唱の調性

譜例9 2段目3小節からみてください。gis:(IV調)に入って後、すぐに原調のdis:→Gis:→dis:と近親調間を揺れ動きます。(答唱に入り、やっと落ち着く。)この色合いの移り変わりも、聴き手 演奏者に流動的な印象を与えるのだと思います。

 

IV調提示部の終わりと次への接続部分

IV調提示部の最終小節には、2回目の頂点(クライマックス)があります。頂点ではありますが短く、しかも柔らかな印象があります。波に例えれば小波の中に大波が隠れていて、一気に押し寄せ、引いていく感覚でしょうか?

 

過去記事にも1回目のクライマックスの記事を書き込みましたので、下記リンク先をクリックし、目次の属調ストレッタ へと飛んでください。

mizuki-shiro.hatenablog.com

 

譜例14

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譜例14〜IV調提示部から次への接続部分

譜例14の最初の小節は、IV調提示部の最後の小節です。この小節は次から始まる接続部分の材料を示しつつ、この曲の2回目の頂点(クライマックス)を含みます。頂点とは、1小節目最後のHです。(がついている)加えて、この小節には、接続部分へのつなぎのフレーズも含まれており、中継地点のような役割を果たしております。

 

ご覧のように、この小節は重要な部分でありますが、演奏する側は意識しすぎて硬くならないように。強弱はついておりませんが、自然に盛り上がっていける作り方となっていますので、コントロールしつつも音の流れに身を任せるのが良いでしょう。

 

譜例14の2段目(接続部分)について。

色分けしてあるフレーズや音型をなぞっていただきたいと思います。組み合わさった音の波が引き潮のように去りつつ、次のストレッタへと繋がっていきます。

 音源

リヒテルの古い音源です。4分23秒くらいからフーガに入ります。 

 

次回は原調ストレッタとストレッタによる接続(第2嬉遊部)を分析します。

 

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