しばらく間があきました。前回で(上記のリンク)提示部が終わり、今回からは展開部です。PDFを調整、説明書きを入れる作業など、面倒なことが多いのですが、自分の勉強にもなっています。かつては気づかなかったことも、譜面を起こすことによって見えてきつつあります。
展開部概略
展開部は導入部分、1テーマと導入部の材料を使った展開、2テーマの展開、再現部への接続と続きます。(大きくみて、4部分に分かれます)古典的なソナタ形式の枠を踏襲していますが、音楽の中身は詩的です。
全体を通して、「遠ざかっていく意識」が音楽を通して現れているような気がします。導入部分の音型に示唆され、2テーマの展開では顕著となります。
導入部
上記は、前回の記事に添付した譜例13です。1小節目、2小節めのモティーフが展開部の導入部分の材料となります。
音源:3’50”〜
譜例14&15は展開部の導入部分です。要素を色分けし、下に記しました。
- 青線で囲んだモティーフは譜例13が発展したもの
- オレンジ色の線は譜例13の右手から発展したもの(元は1テーマ頭の内声にありました。)
- 赤い矢印は5度、4度の音程関係にあるもの。スピリチュアル的には、自我、孤独、父などを暗示する要素です。
- 赤い丸は、オクターブ上での模倣、音型を逆転させオクターブ上で模倣して、別の音型につなぐ役割をしています。
- 緑色の線は、1テーマの最初の16分音符を使用しています。
上記5つの要素が絡み合って提示され、展開部へと進んでいきます。
細かいことですが・・・
2番括弧から数えて、3小節目の左手にgis cis gis cis(赤い線で示した)があります。そして4小節目には、緑色の線で示した1テーマの頭の音型があります。3小節目の音型は4小節目の音型を導き出すために存在しているようです。
あちこちに、同音連打と間をあけての連打が同居しております。これは遠ざかっていく意識=父の死や孤独が、時間によって解決していくことを暗示しているのかもしれません。
展開部1
音源:4’05”〜
展開部1は前半と後半に分けられます。
展開部前半、譜例16&17は導入部分の材料(譜例14&15)を使って、間合いのある展開が繰り広げられています。
譜例16の2小節目から1テーマの頭が提示され、展開のスタートです。
- 4小節目には、導入部の材料3 5小節目には材料1が置かれ、材料5のピアニスティックな音型で7小節目以降のフレーズにつなぎます。
- 7〜9小節目のフレーズは、導入部の1〜4までの材料を使い、歌的且つポリフォニックに形作られています。
- 10小節目以降は、2番、5番の材料を組み合わせて激しく歌わせます。
抑制と解放、これらを音に置き換え、交互に配置することにより、執着から遠ざかる意識を無意識の領域で感じていたのかもしれません。
音源:4’32”〜
展開部1の後半は、前半にあるような間合いがなく、1テーマの頭を使って一挙に解放が進みます。譜例18は頭の部分です。
展開部2
4部分から成り立つ展開部2は、2テーマの材料が使われています。展開部1よりも一歩進み、遠ざかっていく意識の存在を明確に受け取ることができるでしょう。万華鏡のように、素材が変幻自在に美しく姿を変えていくことに、感動を覚えるかもしれません。
1)
音源:4’45”〜
譜例19&20においては、AとBが交互に現れます。BはAの後半付点三連符(青い丸)を使って形成されています。
2)
音源:5’09”〜
譜例21においては、1)で紹介されたAの部分がのびのびと謳われます。提示部の2テーマで記した2度(ピンクの矢印 括弧 丸)が発展していきます。括弧の数は5個、左手のb♭も5個。スピリチュアル的には、孤独の解放とでもいいましょうか?曲調と重ね合わせてみれば、孤独を楽しむような印象を受けます。
2度は次の部分3)でさまざまな形に変容していきます。
3)
音源:5’20”〜
譜例22&23では2テーマの伴奏音型をクッションにして、1)で紹介されたBを出現させることにより、遠ざかっていく意識が明確になることでしょう。クッションといっても、平板なものではなく、その2で使用した2度をさまざまな形で連続させる(ピンクの丸 矢印)ことにより、Bが(青い丸)深みを増すのです。
BとAsの長2度は連続したり、離れたりして、キラキラと輝きます。譜例23においては、2度は消えてしまいます。
4)
音源:5’31”〜
譜例24&25は次の部分への接続です。24では、2テーマの頭をポリフォニックに展開し、25は展開部導入の連打による展開。25は元々1テーマの内声が元になっていますので、この部分は1テーマと2テーマの材料を元にした接続とも考えられます。
展開部3
音源:5’42”〜
展開部3は提示部(2テーマへのつなぎ)の再現です。これはおそらく、再現部を2テーマから始めるための準備であると思われます。(1テーマの再現はありません)
音源
次回は↓↓再現部です。
ただし、再現部はほとんど書くことはありませんので、カツァリス 氏の公開レッスンから、演奏と作曲との関連について記します。